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半年ほど留守しただけなのに、ウブド郊外のギャラリーLIPの周りに見慣れない建物がポツリポツリと増えていた。南の方角にあるシンテッグ・ギャラリーの隣の家はインドネシア風?のインターナショナル・レストランに変わり、その途中の田圃の中には新築の竹造り3階建インド料理店が筍のようにそびえ立ち、風になびいて揺れていた。大風が吹く度にアノ店は大丈夫だろうかと心配になる。その奥にはヴィラ・マンディという名のリゾート施設が完成している。ウ〜ン、このままではギャラリーの周りはヴィラや観光施設でいっぱいになってしまう…と心配になった。
が、良く見てみると肝心のお客さんの姿がサッパリ見えず、店内はいつも閑古鳥が鳴いている。昼間は旅行者が散歩してそれなりに人通りがあるのだが、日が暮れると付近の村人が歩くだけで人通りがぱったりと途切れ、暗〜い田舎の田圃道に変身してしまう。
たぶん、店を構えているのは表向きのことで、いずれ上がるだろう土地への投資が目的ではないだろうか?外国人には無理でもインドネシアのお金持ちにとっては、格好の投資物件なのではなかろうか。
今回のバリ島出張は何もかも慌しいうちに決まってしまった。前回の出張から半年が過ぎているので、そろそろ新作を仕入れる時期にきており、ウブドに完成したコテージLIPの前庭のことも気になっている。宿を選ぶ際に庭の造作は意外と重要で、判断基準の大きなポイントのはず。なんとかしなくてはと気になっていた。
もう直ぐ年越しという12月23日に、小川の護岸兼石壁の土台造りから工事がスタートした。この規模だったら10日前後で完成するだろうとのことだが、費用は工事資材の数量次第なのでやってみないと解らないという。(結果として工期、費用とも予想の2倍で完成)一般的にバリ島では、家を建てる際は発注者が自分で資材を手配し、作業員の賃金も直接彼らに支払う。そのせいか、アチコチで建設途中でタチガレてしまった建物を目にする。恐らく工事半ばで資金が底をつき、万策尽きてしまったのだろう。南無阿弥陀仏…。
この島ではバリの男はあまり働かないというのは常識で、(祭礼に多忙らしい)土木建築作業にはジャワ人の作業員が好んで採用されている。無論、店主も彼らを雇いたいと主張したが、この時期は既に大規模なホテルやヴィラの建設作業に雇われ、今から手配できるのは地元のバリ人しかいなかった。(涙)
工事の殆どは人力で行われる。ブルドーザーもユンボもダンプカーも無い。トラックで土台に使う石(溶岩!)をキンタマーニ方面から、砂、セメント、ブロック等も同じように運びこみ、それを近所のおばさんたちが総勢15人ほどで頭の上の盥に載せて現場に運び込んでくれる。工事の進み具合に合わせてこの作業を繰り返し、最期にトラック4台分の土を運びこんで終了した。
隣村の4人組が工事のメイン作業員となり、70歳過ぎのベテラン?が動作は遅いのだが熟練の手捌きで若い二人を指導していた。がしかし、この爺ちゃんがとんだ食わせもので、怖ろしいことにブロックを水平に積めないことを発見してしまった。その後、店主はチェックマンとして水平器を片手に工事現場を走り回るハメになってしまった。絶壁のようになった石垣を傾いて建設されたらどうなるか…。激烈な雨の中、いずれ悲惨な結末が訪れることになるだろう。
工事開始後10日過ぎた1月1日になっても工事は半分くらいしか進んでいない。(バリ島では元旦も働く)その間作業員4人ともオダラン(村祭り)で、まる2日間休んでくれた。そんなバカな〜とテギさんに頼み込んで、急きょ3人の助っ人を探してもらい工事を続行。多い時は作業員7人、建設資材の運搬人(村のおばちゃんたち)15人、その他助っ人4人の総勢26人という賑やかな時もあった。しかし、雨が降ると工事はストップしてしまう。
漸く完成に漕ぎつけたのは帰国の前日になってのことだった。どうしていつもこうなんだろう?2階 の部屋の拡張工事をした時、キッチンを新設した時、アプローチの石段を改修した時など いつも帰国直前に完成し、その都度もたつく工事の進行状況にヤキモキさせられている。「ギリギリでも何でも間に合ったのだから良かった」と考えるべきか、「工事日程にもっと余裕を持って計画するべきだった」と反省するべきか見解の分かれるところである。
しかし、雨が降る度に工事は中断され、資材の運搬が遅れる度に中断されでは、一体どうやって計算すれば良いのか頭を抱えてしまう。それに発注主(店主のこと)の方もいい加減で、工事が始まった後で「展望台」の建設を思いつき、手描きの簡単な設計図で追加工事を頼んだりしている。意外と大変な工事で日数もおカネも余分にかかったにもかかわらず、ここに昇って(たった4段ですが)展望を楽しもうという勇気のある者が少なかったのは残念…。
朝は日の出と同時にジャワ・ショウビンが飛翔し、白鷺が一羽二羽と目の前に広がる棚田に降り立ち、日が暮れると暗闇の中をホタルが乱舞する。そんな夢のような自然に囲まれたコテージLIPに、新たに「熱帯ガーデン」が誕生するこになりました。さて、この庭をどんな風にアレンジしようかとアタマを悩ませています。良いアイデアがありましたらご一報くださいね〜!
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