熱帯幻想絵画は、近代バリ絵画の歴史を開いたドイツ人作家のワルター・シュピースによって編み出され、上下遠近法と空気遠近法を融合させて、インドネシアの農村風景が幻想的に描かれた、シューレアリズムの流れを汲む描写技法です。白黒の濃淡だけをつける過程と濃淡の上に彩色する過程とに分かれ、色を濁らせずに精緻な濃淡を表現する、驚くべき科学的な合理性によって編み出された技法でもあります。シュピースの死後、後継者として現れたのがガルー女史を筆頭とするアグン・ファミリーで、既に著名な画家ウィラナタとクパキサン、アユの3兄妹が続いている。熱帯幻想絵画とはシュピース・スタイルと呼ばれる作品群に対し作家の坂野徳隆さんが名付けました。